第九展望塔

みんなで叶える物語

[二次創作・感想] 「僕らのラブライブ!16&僕らのラブライブ!サンシャイン!!SP04」

 

5月28日(日)、東京ビッグサイトにて「ラブライブ!」オンリーの同人誌即売会「僕らのラブライブ!16&僕らのラブライブ!サンシャイン!!SP04」が開催されました。
第10回以降、暫く大田区産業プラザPiOで開催されていましたが、今回は「ぷにケットスペシャル2017」との合同開催もあってか、より大きな会場に。体感としては、いつもよりひとも多かったです。入場規制もかかって、人気サークルは屋外まで列が流れていました。

手に入れた同人誌およびグッズのうち、新作の感想をまとめておきます。

 

 

 

【「僕らのラブライブ!16&僕らのラブライブ!サンシャイン!!SP04」新刊】*1

 

うええり・ちちち』(paper&pencil)

「えりち」の三文字からなる言葉遊びで描かれた絵本。紙材からして選り抜いている造本のこだわりは随一で、製本術を学んでいるひとの仕事としか思えない(なにしろ自ら製本しているのだから!)。最後に、すこしにやっとさせる落とし方も良い。蒐集したくなる以上に、誰かに贈りたくなる一冊です。

 

おぎくもりのちねこ時々、あめ。』(SHAMROCK)

星空凛西木野真姫の関係に焦点をあてた三部作の掉尾を飾る、作者にとっても集大成的作品*2。「女の子らしくなれない」という凛の悩みと、恋人になったふたりの関係を呼応させるアプローチは、ありそうであまりなかったもので面白い。更に、何気ない一言から関係が変転する中盤など展開にも工夫が凝らしてあって、質量ともにりんまきの到達点と呼べる作品。ふたりが好きなひとは絶対に読んでほしい*3

 

ムヮルゥィーのスクゥーアイ道一直線』(ザ借家)
「よいこブックスシリーズ」だ、やったー!! スクゥーアイ道を極めるべく小原鞠莉がしょうもないことを画策、松浦果南が振り回され、黒澤ダイヤがクールに対応する三年生三人組。冒頭シリアスかと思いきや、まさかのギャグ一点張り。作者の「のぞえりちゃん」連作と同様、本作ではデフォルメされた鞠莉がはしゃぐはしゃぐ。暴走気味の鞠莉は、のぞえりちゃんとはまた違う魅力があって良い。ギャグを主体としたこれまでの作品とくらべてもシュールなネタが多く、畳み掛けるようにギャグを飛ばして脱線させていく感じは好みでした。

 

かるはtake me out.』(prism*pink)
にこと真姫の恋愛を数多く描いている作者の、はじめての「ラブライブ!サンシャイン」作品、そのプロローグにあたる小冊子。果南と鞠莉、浦の星女学院を卒業したふたりが伊勢を旅行する。本作では、伊勢神宮に参拝して、伊勢うどんを食べる。ゆるい感じの旅で読み心地が好かったので、続きが楽しみ。

 

君野朋成英雄幻想』(きみの友達。)
津島善子国木田花丸が付き合っている設定で描かれた表題作ならびに「サムデイインザレイン」を収める掌編集。幼馴染みのせいか本編でも善子にだけは厳しい花丸、その関係の活かし方が巧い。よしまるを描いた数ある作品のなかでも一線を画している。

 

9℃すきだから✕めない』(low*temp)
……真姫が一途なまでに凛へ(何度も)告白する。凛のマイペースさに振り回される真姫の側から描いていて、少女漫画のヒロインもかくやと言わんばかりの真姫の恥ずかしがりようが愛らしい。小泉花陽矢澤にこの話『こいなんて✕らない』の姉妹編。

 

倉蜂るか#よしまる園児本 -WEB掲載まとめ-』(はちみつかけごはん)
twitterで発表された幼稚園児の頃の善子と花丸を描いた漫画を集めた一冊。いくらでもおかわりできるかわいさ。幼稚園児設定の作品のなかでは、いちばん好きかも。

 

相模わらいばなしをふたつ』(あいあい)

ずっと気になっていた作家その1。花に秘められた、東條希絢瀬絵里のきもちを描く。表紙からして只事ではない雰囲気だが*4、内容はそれどころの素晴らしさではなかった。ふわっとした優しいタッチから想像していた以上に、感情の掬いかたに、はっとさせられるものがある。また、心象風景とモノローグの挿し込み方が独特。読み違いでなければ、前半と後半で、ふたりがμ'sにはいる前後、半年以上は時間が経過している筈*5で、それに技巧的なくさみがしない。これは自然にしているとしか思えない。恐ろしい。

 

サンクス仮面にこぱな Longing or Love』(八王子GALAXY VENUS)

花陽がにこの家におじゃまする話。にこに好意を抱きながらも若干空回り気味の花陽は「こっちの花陽ちんも好きにゃ」(©️星空凛)という感じで、見ていて微笑ましい。しかし、突然挿入されるあのポエムがないとすこし物足りなく感じてしまうのは、こちらがおかしくなってしまったのだろうか。

 

しんごー蔵出し!凛ちゃん漫画』(よんごーあんぐる)

未発表作品「#自主トレ」と「#翼をくらはい feat.凛ちゃん」を収めた小冊子。一編目は、他愛ない発想をネタにして、その違和感でするっと落とす、作者の得意とするスタイルで描かれた掌編。“翼をください”のメロディに“僕たちはひとつの光”の歌詞「時をまきもどしてみるかい?」をリフレインさせる二編目は、よくわからないが妙に癖になる。

 

だたろうそれゆけ かなんちゃん』(だだだ珈琲)

実家のダイビングショップの客入りが悪くて、おこづかいがもらえなくなった果南。彼女のためにAqoursのメンバーがお客さんの増えるアイディアを出し合う。往年のコロコロコミック(あるいは『アンパンマン』)の香りがする表紙だが、なかは作者の普段のタッチで描かれた4コマ漫画。「あとがき」にははじめての4コマ漫画と書いてあるが手慣れている。何より、果南の脇に抱えられる黒澤ルビィがかわいい。

 

Chigayacherish』(chou*chou)
ずっと気になっていた作家その2。新しい衣装の撮影に自信がもてない花陽に、にこが魔法をかける。「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」ホワイトデー編の衣装から想像を膨らませて、ひとつの物語を仕立て上げている。天使をイメージした衣装と相俟って、読んでいるあいだ多幸感がありました。

 

つな春に住む』(大地の恵み)

会場で見付けて気になった本その1。社会人になって一緒に暮らし始めた希と絵里が、ふたりで夜のお花見をする。やわらかいイラストとゆるやかなふたりの関係が合っていて好みの作風でした。希が図書館司書をしているという設定は個人的なつぼにめちゃくちゃハマったので、その話も読んでみたい。

 

ふくたろうCHIKA先生のすくーるあいどる♡れっすん』(スーパー銭湯
会場で見付けて気になった本その2*6。スーツを身に纏う高海千歌から、渡辺曜が手取り足取りスクールアイドルについてのレッスンを受ける。基本いちゃいちゃしているが、最後で一気に甘酸っぱく。曜と同じように、千歌に恋してしまいそうな輝きがある。今まで読んだことがなかったので、これはまずいと思ってあわてて既刊も買って読んだ。『おしえてようちゃん』に悶絶して『ふたつぼし』に絶叫した。

 

ぺそーふじやまコレクション!』(ふじやまマンモス)

なんだろう、この懐かしい感じ。60年代〜70年代の週刊誌に載っていた1頁漫画に似ているのだと、本のかたちで手に取って思い至った。頁のコマ割りを無視した自在な描き方は、いまの方が却って新鮮に映るかもしれない。なんとなく何度もぱらぱら見返したくなる一冊。

 

もけアベコベランデヴー?』(gaton.)

恋人同士の南ことり園田海未が、ふたりで海に行く。はじめてのデートに期待を膨らませ、かわいい水着を選ぶことり。甘い展開を読者にも期待させておいてから、ことりと海未それぞれの勘違いでラブコメに転調していくあたり、楽しくて仕方なかった。ころころ表情の変わることりが、もう本当にかわいい。もけの作品は好きなものが多いが、本作は読んでいる間いちばん楽しかった作品かもしれない。

 

Tideland』(N/R/F)
希とにこがコインランドリーで交わす会話を描いた掌編を収める小冊子。コインランドリーという日常の一場面から、ここではないどこか(モン・サン・ミシェル)を夢想する。素朴な話だけど、対置させる場所の選び方が良い*7。ちょっと癖のあるフォントを使い分けているが、作者のこだわりだろうか。

 

やちむせんべつ②』(あげだし豆腐)

表紙に「らくがき本」とあるように、凛と真姫にまつわるアイディアノートにちかい小冊子。大正ロマンナースのお仕事、大学生になったふたりが付き合っている設定などなど、断片を見て想像を膨らませる楽しさがある。大正ロマンパロディは個人的にとても読みたい*8

 

特製『えり・ちちち』シール(うえ/paper&pencil)

『えり・ちちち』のイラストを型どったフレークシール。フレークシールってもったいなくて、なかなか使えないですよね。

 

マスキングテープおふとん/メランコフランコ

μ'sとAqours、それぞれ9人のイラストが描かれたマスキングテープ。かわいい。プレゼント分も買ってさっそくひとに贈ったら喜んでもらえた。

 

Tシャツれん/雑紙)

μ's9人のデフォルメされたイラストをプリントしたTシャツ。Tシャツは襟首の詰まっていない方が好みなので、これは嬉しい。ネイビーを買いました。

 

 

 

全体の感想としては、おぎもけのふたりの新作が、もうとにかく素晴らしかった。『くもりのちねこ時々、あめ。』は待っていて本当に良かったし、期待以上という点では『アベコベランデヴー』が低くない期待値を遥かに上回っていた。ともに大好きな一冊でした。

また、ちょっとひさしぶりのうえさんの新作と、桶さんの新作も嬉しい。サンクス仮面さん、しんごーさんは既に安心して読める域に達していて、迷うことなく手に取れるので、ありがたいです。

相模さん、Chigayaさん、つなさん、ふくたろうさんと、はじめて読んだ方々の作品も良かった。とりあえずは新刊を楽しみに、どうにかして既刊を探すか……。

次回以降に期待が高まるのは、かるはさんの『take me out.』の続き。そして、個人的には、れんさんの新刊も楽しみにしています(「輪郭をなぞる」も良かったですが、『海沿い』がめちゃくちゃ好きなのです)。

 

 

 

最後に、既刊で手に入れた作品もリストにまとめておきます。なお、既に持っているもので薦める用途に購入したものもあります。

 

【「僕らのラブライブ!16&僕らのラブライブ!サンシャイン!!SP04」既刊購入リスト】

青椿トトまた呼んでくれるかい?』(南極ひまわり/2016年4月)
〇青椿トト『キミが来てくれるなら』(南極ひまわり/2016年9月)
〇青椿トト『がんばり屋なキミへ』(南極ひまわり/2016年11月)
〇青椿トト『キミが笑うまで』(南極ひまわり/2017年4月)
〇うえ『りんちゃん りんちゃん/かよちん かよちん』(paper&pencil/2017年1月)
〇倉蜂るか『#よしまる園児本 -雨-』(はちみつかけごはん/2017年2月)
〇サンクス仮面『ほのにこPrecious Weekend.』(八王子GALAXY VENUS/2017年3月)
〇しんごー『うみりんアパート』(よんごーあんぐる/2016年8月)
〇だたろう『キューティーパンサーのサイキッククッキング』(だだだ珈琲/2017年3月)
〇ふくたろう『おしえてようちゃん』(スーパー銭湯/2017年4月)
〇やち『Dear…』(あげだし豆腐/2017年3月)
〇青椿トト・西門BIRTHDAY YOU♡RIKO』(南極DAYS/2017年4月)
のぞえり凧(うえ・ぷりん(牛乳)/paper&pencil/2017年1月)

 

*1:以下、リンクはtwitter、またはpixivと委託書店(主にメロンブックス)のURLになります。

*2:表紙に「kumorinochineko vol.2」とあるように本作は『くもりのちねこ』の続編ではあるが、同じ凛と真姫を描いた『花に嵐に時々、にゃんこ』とあわせて三部作となっている。

*3:もちろん、一作品として独立して読むこともできるので、『くもりのちねこ』を読んでいない方もぜひ。

*4:この表裏の対比からなる装画は、どう見ても傑作の顔をしている。

*5:前半に出てくるネモフィラやわすれな草は5月の花、終盤の会話はμ'sにはいる前のものとは思えないので。

*6:見付けたといっても、桶さんとの合同スペースだったからだけど。

*7:なんというか、固有名詞にもフェチシズムってありますよね。その点、「コインランドリー」と「モン・サン・ミシェル」はかなりフェティッシュな気がします。

*8:……と、軽々しく書いたものの、この時代のものは雰囲気を出して設定を詰めるのが大変なんだよなあ、と。